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2023年10月22日日曜日

恋の練習曲

恋の練習曲

 

 

戸惑いと、

水色の若き過ち、

艶めかしい欲情の余韻、

女は理由(わけ)を知って、

無垢な奉仕としての恋を、

私に捧げた。



2023年10月8日日曜日

22年目の独白

22年目の独白

 

 

長年交際しても何一つインスピレーションを得られない関係もあれば、

たった数日間いっしょにいただけでその後の人生で永遠のミューズになってくれた女(ひと)もいる、

大切なのは長さではなく深さなのか、

仮にすべてを知って幻滅したとしても、

君がぼくにしてくれたことの大きさは一向に変わらない。



宿命の詩女神(ミューズ)

宿命の詩女神(ミューズ)

 

 

偶然、

吉行が彼の娼婦小説の中に描いた女たちにも似た、

若き日に出会った、

暗い翳をもつ二人の女が、

私の長年の、

宿命の詩女神(ミューズ)だった、

 

私は二人の身体に一度だって触れたことはなかった、

それゆえ、

二人への想いは何重にも層を成していった、

若き日に彼女たちに出会ったことにも、

きっと何らかの意味があった、

悲しさは二人が生活した町の風景に溶け合って、

私の胸を締めつけた、

 

恋は幻惑と憔悴に導かれ、

詩の中に実を結ぶまでには長い年月を経た、

 

今はもう、

二人がそれぞれどこでどんな暮らしをしているのか、

知る由もない、

そして、

きっともう二度と二人の姿を見ることもないだろう、

 

人はあの二度の恋をどちらも愛未満と呼ぶかもしれない、

それでも、

私には教えられたことが数多くあった、

 

また秋が来ると、

滋味な涼しさの中に心に沁み込むような寂しさを想い、

私は遠き日に恋焦がれた、

彼女たちへの追憶に浸る。



2023年9月22日金曜日

真実よりも懐かしく

真実よりも懐かしく

 

 

妖しく黒光りする瞳の内奥に、

佇む古風にして永遠なる謎、

行き過ぎたくらいに繊細な話しぶりで、

ぼくの心を完全に捉えた彼女の魅惑、

永遠化される瞬間、

22年、

それは詩よりも深く、

真実よりも懐かしく、

裏返せばある種の背徳なのか、

それとも新たなまた別の純真なのか、

もう私には解らない。



長い恋

長い恋

 

 

その悲しみの横顔は輪廻の影に浸透し、

記憶は再編成されて無常を顕し、

淀む流れにあなたがもつ優しさが溶解し、

私は30年間の心の空白を埋めた、

歌われなかった歌、

すれ違いの青春、

涙はただあなただけの為にあった、

か細いシルエットに街自体がもつ哀愁は反映され、

電車が過ぎ去ってゆく、

あなたはもうこの街を出て行ったのか、

行く先は何処なのか、

痛みを言葉に替え、

誰にも聞こえない音量で小さく叫ぶしかなかったあの頃の自分、

この、

悲しくも優しい水色の心の彷徨は、

いつまでも終わりそうにない。



彼女たちは生き写しだった

彼女たちは生き写しだった

 

 

彼女たちは生き写しだった、

歳の差は十、

同じ町の駅近く、

男が思春期の苦悩で道を踏み誤ったときに、

荒野に咲く気高く可憐な花のような存在だった、

彼女たちはまさしく生き写しだった。



2023年9月5日火曜日

あの日の恋

あの日の恋

 

 

不良だったが本当は心優しい彼女は、

意気地なしだった若き日の私がその日どうにか言葉を発するまで、

私の面前に立ってじっと待っていてくれた。

私は今も君のその優しさを想い出して感謝する。

恋の記憶は、

重ねられて薄められて、

さえない日々の忙しさの中で色褪せて、

忘れてしまいそうになったときに、

あるときフラッシュバックのように突然強く蘇り、

この胸を熱く抱く。

すべてが運命の導きだったと信じて、

また私たちは雑踏の中をすれ違っていく。



詩人の片想い

詩人の片想い

 

 

美しい彼女は、

昼間八時間カラオケ屋のバイトをして、

そのあと夜に五時間パブのホステスをして働いていた。

 

美しい彼女は、

心が弱く、

いつも無味な運命に流されるように生きていた。

 

美しい彼女は、悲しく、

ひとつの詩の大いなる暗示だった。

私が密かに想っていたことなどは、

彼女には知られる由もないことだった。

 

美しい彼女は、悲しく、

一夜限りの相手の子を身ごもってしまい、

その後どこかに消えて行方知らずとなってしまった。



元カノに

元カノに

 

 

あのとき受けた仕打ちを思い返せば、

粘着的に何度もあなたを憎んだ時はあったが、

けっきょくのところは、

二人の未来への考え方が大きくズレていたということ、

それだけのことだった、

あなたは、

あなた自身としては、

いい意味で平凡な、

平凡ゆえにきれいな心の、

持ち主だった、

きっとそれは、

私には多少もったいないくらいの美徳だった、

若さは過ちをおかし、

それを懐かしみ許せるときが来る日まで、

人は人生を生きてゆく、

特別なドラマなんか存在しない、

芸術に天才はいても、

人生に天才などいない、

だから、

今日も明日も、

視野はできるだけ大きく、

でも、

歩幅は小さくとって、

人はゆっくりと歩いていくだけ。



2022年12月21日水曜日

名残り

名残り

 

 

失われし愛の歌、

涙に濡れた四谷の街角、

もう傍にはいないあなたに問いかける、

二人の時間にはどんな意味があったのかと、

 

そうして私には孤独だけが待っていた、

苦し紛れに何かを築き上げようと躍起になった、

しかし気づけば、

同じ円をただ繰り返し周るだけの生活だった、

 

青春の傷は誰にでもあるものだからと、

半ば悟ったつもりで生きてきた、

全てが完結するときがきたら、

全てを肯定できるだろうと信じたかった、

 

失われし愛の歌、

涙に濡れたあの二人だけの部屋、

 

時は長く過ぎてしまった、

 

もう傷跡さえも、

見えない大人になった。



2022年11月20日日曜日

プラトニック

プラトニック

 

 

15の夏、

君が手帳に記した悲しみの言葉、

かなわぬ恋の微熱、

疲れ果てた肉体、

針金のように細かった身体と、

それで精一杯支え続けた夢、また夢、

そう、

あの頃はまだ何ら始まってさえいなかった、

 

言葉を交わすことすら一度もないまま、

ぼくの前から消え去った彼女、

その後何十年でも考えさせられた、

プラトニックのヒントだけを残し。

 

愛の夢、

希望の果て、

全ての細胞でもって合わさることを望んだ青春。

 

長いトンネルを潜り抜けて、

大粒の涙だけを残し。



2022年11月9日水曜日

二人の失敗

二人の失敗

 

 

あの恋が失敗に終わったのは

二人ともあまりに若すぎたことと

性愛にばかり心が傾いていたから

もっとも

恋というものに「成功」など初めからないのかもしれないが

 

あの若さに見合うくらいに

二人は何かを学び得たのか?

神のレッスンだったのか?

それとも

悪魔の仕組んだ陳腐な罠にすぎなかったのか?



トランジション

トランジション

 

 

こちらが成長すれば 成熟すれば

君はぼくの面前に現れてくれるの?

三行の詩を書いている間にも

人生は過ぎ去ってゆくよ



M嬢に

M嬢に

 

 

平均値からズレた

そのズレの大きさの分だけ

君は美しい

ぼくは君が好き



 

 

恋という感情から長く遠ざかっていれば、

気ままに懐かしくもなり、

「恋っていいよね」「恋したいな」などと呑気な肯定的なつぶやきができるものだが、

ひとたび新たな恋が始まれば、

またおなじみの嫉妬心やら独占欲やら何やらで、

喜び以上に苦しみに多く苛まれる日々が始まってしまう。

それでも人は恋するときには恋をしてしまう。

男が身を焦がしている間、

女は倦怠に身をまかせスマートフォンをいじっている。

男が遠くでこっそり泣いている間にも、

女はどこかで誰かと何かのことでくすくす笑っている。

恋の詩は誰が書くのか、

愛の歌は誰が歌うのか。



不良娘

不良娘

 

 

17の頃、

いつも駅ですれ違っていた、

細く長い脚の、

茶髪で化粧の濃い、

あの不良娘が大好きだった。

彼女はまだ若く、

それなのに悲しい沈んだ瞳をしていた。

彼女が見つめている向こう側がぼくにはうかがい知れなかった。

そこに何があるのかが、わからなかった。

彼女の悲しさはどこから由来するのか、

彼女が夢見たものは何だったのか、

彼女が人生で願ったものは何だったのか、

そのすべての謎が、

ぼくのその後の人生の命題となった。

ある日を境に、

彼女はもう駅には来なくなってしまった。

彼女こそがぼくのインスピレーションだった。

ぼくは青春の光と影を同時に見失った。



ユキ

ユキ

 

 

家出してきた親友の子と二人して、

君は港町の、海の見えるアパートをどこからか見つけ、

そこで女二人わびしい共同生活を始めた。

しかし、

間もなくして君は行きずりの相手の子を身ごもり、

その男と結婚するため、

親友との生活を急きょ終わらせた。

ユキは美しかったが、

優しすぎて、

女なのにどうしようもなく不器用だった。

ユキの故郷は遠い場所にあった。

その瞳はいつもかなしく潤んでいた。

ユキ、

あなたは今どこにいるの?



15の頃

15の頃

 

 

この田舎町の、

駅のベンチに一人座り、

友人の姉に片恋していた昔々の日々を思い出していた。

あれからどれほどの時が過ぎたのか。

音のしない、

優しくもなく冷たくもない追憶の風。

男はすべてを手に入れ、

いずこかに消えた。

この田舎町は、

どんな小さなドラマも、

ただ無言で受け入れる。

彼女は男の自転車のうしろに乗って、

輝く未来へとその気高い魅力を振りまいた。

とり残されたぼくは、

ひとり詩をノートに書きとめるだけだった。



2022年11月8日火曜日

機械人間

 機械人間

 

 

ぼくを一度かなしみの淵から救い上げてくれた君。

そんな君が最後にぼくに求め願ったものを、

ぼくは自分のエゴから、

君に与え返すことができなかった。

二人の間にギブ・アンド・テイクは成立しなかった。

そして君は去って行った。

君がいなくなったあとの銀色の街で、

ぼくは後悔という感情すらわかない、機械人間のまま、

再び一人で生きるようになった。

それでも、

二人が一時共に暮らしたアパートの近くを通り過ぎるときには、

必ず涙があふれはした。

あれから15年以上も経って、

今こうして君との思い出を詩に書きとめるときも、

ぼくは冷たい灰色の心で、

これをどうやったら上手な詩にでっちあげられるだろうかとばかり気にしている、

機械人間のままだった。



ある女性歌手に

 ある女性歌手に

 

 

君に恋して、

君の話す外国語に憧れた。

それだけじゃない、

ぼくも君のように歌いたいと願った、18の冬。

それから間もなくしてぼくは無謀にも、

にわか仕込みの君の国の言葉でもって、デタラメに歌の歌詞を書き始めた。

君は遠くに光り輝いていた。

ぼくは東洋の無作法な貧乏ロッカーにすぎなかった。

行く先の見えない東京の街の真ん中で、

ひとりもがいていた。

君の住むあの国は、

遠い憧れの約束の地になっていた。

でも、

ある人の自殺を引き金に、

君はあるときから、

歌うのをすっかり止めた。

行方もわからなくなってしまった。

それで、

君を想いながら書き溜めたぼくのソングリリックは、

聞かせる相手もいなくなってしまった。

だからぼくは全部破り捨てた。

それから数年経って、

ぼくは、

雪積る冬に初めて君の国を旅した。

初めて来たのに、

なんだか懐かしく思えた。

君の面影を追って、

繁華街をぶらついたりした。

当たり前のように、

君を見つけることはできなかった。

2週間ばかり滞在し、

帰りの飛行機に乗ってからも、

ぼくの脳裏には君の歌声が流れていた。

それからまた10年ほども過ぎたある日、

もはやロッカーは辞めてしまっていたぼくの下に、

突然君からの手紙が届いた。

君は母親になって家族ができ、

家族旅行に出かける直前に、

ぼく宛に手紙を書いてくれたのだった。

文面はとてもはきはきしていて、幸せそうだった。

ぼくは君の歌の入ったCDを取り出して、

久しぶりにステレオでかけてみた。

ぼくの人生を変えた君との、

不思議な縁を思いながら、

しばらくじっと聴き入っていた。

それはぼくだけの、

けっして忘れることのない宝だった。

またいつか、

君は歌うだろうか?

またいつか、

ぼくは歌うことができるだろうか?

君がくれた青春の夢の残り香は、

今でもぼくの中にある。