ガブリエル・フォーレに
79年の人生の終わりに生まれた弦楽四重奏、
想いは何よりも深く、
喜びと悲しみの間の幾千もの機微に、
メロディは託され、
ハーモニーは奉仕され、
悠久の時と繋がる心の鍵は緩やかな慰めとなり、
繊細極まる音世界の内部にまた新たな音世界が存在する、
フラクタルの純真をあなたは今垣間見させた。
ガブリエル・フォーレに
79年の人生の終わりに生まれた弦楽四重奏、
想いは何よりも深く、
喜びと悲しみの間の幾千もの機微に、
メロディは託され、
ハーモニーは奉仕され、
悠久の時と繋がる心の鍵は緩やかな慰めとなり、
繊細極まる音世界の内部にまた新たな音世界が存在する、
フラクタルの純真をあなたは今垣間見させた。
太宰治に
業深き半神半獣、
言葉の可能性だけに賭けた魂、
カッコイイ分だけ逆説的にカッコ悪くて、
カッコ悪い分だけ潔くカッコイイ、
あの自己破滅型小説家の人間性には、
そういう形容の仕方しか思いつかないよ、
近くにいてこちらの人生に介入されたら迷惑だけど、
遠くから見ていた分には他の誰よりもインスピレーションの源泉になった、
そんな存在、
俺も、
青春の傍らで彼には随分と影響されたっけな、
彼の名は、
津島修治、
ペンネーム、
太宰治。
ミキ・ベレニィに
18歳、
進むべき道をついに見つけた喜び、
あなたのおかげで嫌いだった英語が大好きになれた、
そして二ケ月で偏差値20上げ、
もうぼくは無敵状態、
夢中になって書き連ねた英語の自作歌詞、
それが機縁で集まってきた人脈、
予備校ライフ、
第二章の青春、
いつの日かロンドンに行くことを夢見て、
まずは東京進出を当面の目標に据えた、
お気に入りのレスポールコピーモデル、
ハードケース、
ロックドリームは日本人の顔、
夢が次の夢を呼んだ、
愛が次の愛にこだました。
小説家Yに
彼が私の一番お気に入りの小説家、
しかし私たち二人はある部分があまりに似すぎていて、
私はしばしば、
彼が作品の中に隠した悲しみの叫びをダイレクトに感じ取ってしまい、
ウツ状態に陥ってしまう。
世代は遠く離れていたが、
二人は同じ詩人からの感化で芸術家となり、
だから彼は私の兄弟子、
いつだったか、
異次元旅行で出逢ったりもした、
彼は異次元の夢の中で、
「ぼくの小説を愛してくれてありがとう、君は幸せになるからね」
と、
私に予言した。
アマデウス・モーツァルトに贈る詩
誰よりも軽々と自由に音の海を泳ぐ、
ハ短調の悲哀を秘めたあなたは、
最奥の神のお気に入りの子、
生まれたての純真と、
全てを知った大人の凝縮と、
奔放なる若さは縦横無尽に操る技の原動力だった、
艶めかしい詩の秘密を協奏曲に隠し、
レクイエムには人生の傷を注入し、
己の死の匂いまでも予感させ、
シムプリシティの裏に絶対に解けない謎を後世に残した、
あなたはどこまでも、
他の誰よりも美しく羽ばたいた、
人類至上の音楽家。
ドビュッシー讃
音の壁を打ち破る使命と、
神の計画を携えた音列、
一生をかけて一つの技に執心し、
あなただけが聞くことのできた天使たちの歌声を翻訳する、
無限に広がる五線譜、
追いつけた者などいない天賦の才、
温かなるアラベスク、
踊るスノーフレイク、
千年後にも輝くだろう奇跡の連結、
幸福の機微と、
喜びの有機的色彩は、
幾何学の内部に隠れてゆく至上の秘密。
ああ、
あなただけが魂の瞳で見た風景を、
我々が見ることを許される未来はあるのか?
吉行淳之介に
あなたが好んだ俗世の色は、
ブラームスの3の3がよく似合う町並、
鋭敏な描写で私に見せた憂愁は、
兄弟子の心に棲みついた悲しきさざ波の音、
抱いた女に、
隠し通したはずの純情を見破られ、
弱い肉体に年輪となって残っていった、
儚いモノクローム写真の記憶、
文学で慰めたのはあなた自身の過去だったのか、
それとも時代の傷を受け止めた奉仕行為、
ただそれに過ぎなかった人生だったのか。
ジョニー・サンダースに捧げる詩
スキャンダラスな筋肉質の細身の躰と、
幼児のままのピュアマインドで、
野蛮をアートに昇華するギターストローク放てば、
虜に出来ない者などいなかった、
短い生涯、
弱さから麻薬に溺れ、
一文無しのロックの王者、
その伝記を生きた君、
人生を旅で費やし、
年を追うごとに繊細になっていった音楽の、
珠玉の宝を君は誰に委ねたのか、
死の直前まで想い続けた、
あのバラードのミューズは、
魂の双子は一体誰?
芥川龍之介の魂に捧ぐ
隠し通した欲望の渦の真ん中に、
虚無詩人は立ち止まっている、
ぎこちない語法、
動けない夜の夢、
自己嫌悪と自己憐憫の間に涙する、
歯車は狂ったのか、
それとも、
始めから計画通りだったのか、
テクニックは装飾する武装、
心は成長を拒む倒置、
プラトニックスイサイドの最終章は痛ましく、
病める時代の先駆者の、
骨と皮ばかりの躰の影に。
R.Hに捧ぐ
ベッドに寝そべって、
退廃を装って、
詩人を気取って、
パンクスの先駆者になって、
一度皆から忘れ去られて、
そのあと再発見されて、
一文無しになった直後に大金が舞い込んで、
誰からも「もうじき死ぬ」と思われたのに長生きして、
暇なとき書き物して、
極東の素朴なアーティストに偶然にも霊感与えて、
いつものようにジャンクフード食べて、
来世を思い描いて、
革命を企てて・・・。
ぼくの師匠
ぼくがとても尊敬する、
かなしい師匠は、
詩は孤独者の慰めにすぎないと言われた。
ぼくも30年くらいそれに同意していた。
しかし、
今、
自分を媒介にして、
喜びに溢れた宇宙言語の翻訳がなされるのが、
自分にとっての詩作なんだと知り、
人生は自分ひとりではないと感じるようになった。
きっと師匠も、
今頃はプレアデスかオリオンあたりの星で、
当時とはまた違った見方で、
地球での人生を懐かしく思い出していることだろう。
おげんきですか?