2023年1月28日土曜日

吉行淳之介に

吉行淳之介に

 

 

あなたが好んだ俗世の色は、

ブラームスの3の3がよく似合う町並、

鋭敏な描写で私に見せた憂愁は、

兄弟子の心に棲みついた悲しきさざ波の音、

抱いた女に、

隠し通したはずの純情を見破られ、

弱い肉体に年輪となって残っていった、

儚いモノクローム写真の記憶、

文学で慰めたのはあなた自身の過去だったのか、

それとも時代の傷を受け止めた奉仕行為、

ただそれに過ぎなかった人生だったのか。



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